今日の景色を 忘れない様にと 僕は息を止めるんだ
どもども。
ひゃくとんです。
熱戦の多かったオリンピック*1もいよいよ閉会。
各種SNSを覗いていると。
「オリンピック感動した!」
というコメントの裏で。
「予備校講師になりたい」
「将来は医学教育を!」
と宣言している学生さんが急上昇している印象です。
国試対策のメインが映像講義に移り変わってから久しく、
自分も憧れの予備校講師にという想いが募ってきているのでしょうか。
それとも、新専門医制度の是非について取り沙汰される昨今。
リスク分散・副業として「予備校講師」が選ばれる時代に
なってきたということでしょうか。
幸運なことに現在の私は。
国試対策委員、国試浪人の経験やブログを通して。
大学教員は勿論、臨床家や現役予備校講師など、
多くの教育者とお話できる環境にあります。
また、medu4のお仕事を少しお手伝いさせて頂いた経緯を知ってか知らずか。
学生さんや研修医の先生からも、私個人にちょくちょくDMを頂きます。
個人的には。
医学教育に興味のある方が増えてくれることは非常に嬉しいです。
先日、民谷先生ともスペース上でも少し交流させていただき
抜き打ちでスペースしたところ、
— 民谷 健太郎 @医学教育×救急科専門医 (@774buya) 2021年7月30日
何人か来てくれました。
ありがたや〜
また、やりますので
是非いらしてください。
「医学教育に興味のある志の高い学生さんは確実に増えてきた」
「もっと参入障壁が低くなって身近なものになってくれると良いよね」
なんてテーマでお話を頂いたりもしました。
しかし。
ここで、批判を覚悟で敢えて断言します。
そうなんです。
臨床が忙しくなったり、環境や家庭関係が変化したり。
春先には殆ど聞かなくなり夏の風物詩と化しています(´・ω・`)
そこで今回は。
医学教育志望が増えている背景を基に
「医学教育」や「予備校」の現状を整理しつつ
志の高い学生はどうして消えてしまうのか
個人的所見を述べてみたいと思います。
【目次】
医学教育の大きな誤解
そもそも。
”医学教育”という言葉は一枚岩ではありません。
考えてみれば。
医学知識を誰かに教えるというベクトルそのものが医学教育なわけで。
講師 → 学生
だけでなく
教授 → 指導医 → 専門医 → 専攻医 → 初期研修医 → 医学生
そのすべてが医学教育なわけです。
特に医療従事者間での医学教育については全国規模の学会も存在し、
「臨床×医学教育」について毎年活発な議論発表がなされています。
民谷先生*2も演者登壇。
https://site2.convention.co.jp/jsme53/index.html
話を戻すと、
もっと広義には。
指導者 → コメディカル・企業・近隣住民・患者・家族・中高生
そのすべてが医学教育ですよね。
ここまで書いていて思うに。
さきの学生さんの多くの発言は
「医学教育やりたい ≒ 予備校講師になりたい」
なのだということに最近気が付きました(´・ω・`)
それは詰まるところ。
大学(基礎を含めた学内講師)や地域向け講演会(臨床医)で医学教育をしたい!
という人が皆無だという事実に辿り着きます。
多くの、医学教育者志望で質問を寄せてくれる方々に向けて。
「それは臨床の後輩向け(初期研修医向け)はどうかな?」
「大学の講師を目指してみるのは??内部から改革してみるのも楽しそう!」
「地域の講演会での啓蒙活動も面白いし立派な医学教育だよ!」
という頓珍漢な逆質問、
それに対するキョトンとした反応をやっと理解しました。
すみません(´;ω;`)ウゥゥ
ただ。
私が伝えたかったのは。
医学を教える対象は、医学生(受験生)に限らないよ!
というメッセージです。
教育はどんな場面・どんな相手にも必ず行う重要なスキルではありますので、
もう少し身近であってほしいと切に思っています。
医学教育の中の“予備校”とは
さて。
横道に逸れたついでにもう少し脱線。
医学教育の中でも、特に「医師国家試験対策」にフォーカスを当てると、
大学教育と予備校とは切っても切り離せない動静にあります。
各大学の医師国家試験対策委員会の報告書を眺めてみると、
現状の医師国家試験では、「知識」を主として問う試験のみが実施され、技能・態度についての実技試験は行われていない。したがって、多くの医学部・医科大学では 6 年生の一定期間は「知識」を問う問題への対応となっており、予備校の模擬試験に頼っている一面もある。医師国家試験受験のために多くの時間を座学に費やすことは、卒前臨床実習と卒後臨床研修の連続性を損なう大きな障壁となっている。
http://www.chnmsj.jp/granddesign_H28.pdf
概ねどこも上記のような状況のようです。
時々話題になっていた
「医学部高学年の講義、予備校に委託しては?」
問題も、もはや現実のものになりつつあり。
実際に、多くの私立大学では各予備校と提携し、
学校負担(学費込みで)で予備校講義を提供したり、
出張講義は勿論のこと、夏期冬期の合宿なども開催しています。
(これについては、国内医学部が職業訓練学校の一環であるという外因もさることながら、医学生自身が、かつて大学受験時代に予備校の恩恵に肖って合格した人が大多数だからという説もあります)
教育機関であるはずの大学校が、
殊に国試については予備学校に外注しているという本末転倒な現実があります。
ただこれには、大学側に同情の余地もあって。
特に大学では、教育は評価と表裏一体な部分もあり、
一定の成果をあげるための苦渋の選択でもあると思っています。
病院での初期後期研修医指導(指導医要綱)についても。
臨床研修エフォートとして40時間/月 を教育に割けているか
その対策によって出席率や国試合格率は上昇したのか
で助成金が決定されたりしていますからね。
かといって国の予算は決まっているため見込みよりも貰えないケースが多く、
更には病院の中抜きによって教育をしている先生(大学講師)自身には
殆ど入らないという現実もあるとか。
臨床をしながら教育をするのは時間的にも金銭的にも厳しい。
そんな中で、
機関はなんとしてでも出席率や合格率という”結果”を出さなくてはいけない。
そうなってくると、
内部の先生方のモチベーションが上がらなく立候補も減るので、
必然的に外注せざるを得ない負のスパイラルに陥るんですよね。
(こうした予備校傾重の結果として、大学は「国試が危うい医学生を卒試で落とす」という”予防的切除“を行うだけの場となり果ててしまわないか心配ではあります。)
ただし、外注すべてが悪というわけではなく
大学教育には絶対に担えない評価指標もあります。
それは全国模試です。
メルカリにめっちゃ売っている……。
直前期では受験者が7,000人以上ともなり、
もはやTECOM、MECの模試はインフラ化しております。
各社とも
「(同じ予備校の)すべての模試を受けると国試範囲が網羅されるように作成」
されていますし、進級判定に模擬試験の成績を考慮している大学もあるとかないとか。
大学が予備校化しているのではなく、予備校が大学化しているんです。
大学の医学教育部門・国試対策委員会に従事するという方法も一考ですが、
内部改革よりも予備校講師に!という風潮もこうした背景があるからかもしれません。
医師国家試験予備校と市場規模
さて。
お互いの大きな齟齬が解けたところで。
皆さんが一番気になるであろう「医師国家試験予備校」について掘り下げていきましょう。
ここでは、予備校含む学習塾全体の市場動向についてお伝えします。
いわゆる、ニーズの確認ですね。
厚生労働省の検討会によると。
少子高齢化による需給変容は加味しつつ、依然として存在する医師不足問題に対し、
政府は2008年より開始している医学部定員増は少なくとも2023年まで延長する方針*3のようです。
出典:TECOM 第115回医師国家試験合格状況https://www.m3e.jp/igaku/topics/kokushi/115result/
ここで国家試験の合格者推移も考慮していきます。
日本における医学部の人数は限られているため、
一定の合格率であれば常に一定の人数が排出される仕組みです。
通年、医師国家試験の受験生は8,500人程度でした。
しかし。
海外医学部卒業生も増加しつつある中、
合格率は過去10年は大きく変化はなく90%前後であるため、
近年の受験者数も一万人程度まで増加しています。
現状、9,000人の合格枠を10,000人で奪い合っている状態です。
今後どういう推移をするか不明ですし、
ずっとこの排出率で推移するのかは想像しがたいですが。
看歯薬などのコメディカル国家試験の合格率が
保健制度や需給によって毎年大きく変動していることや、
将来的な定員削減の方向性を鑑みると。
先行きの医師国試合格率も90%を上限に徐々に減少、
限られた枠の中でしのぎを削る状勢になる可能性は大きく、
国試対策は一層加熱すると考えられます。
(この医師需給問題については、女性医師の増加や「ドロップ医」の増加により、少子高齢化の波を受けつつも需給悪化は比較的緩やかではないかと思っています。)
さらに、今後も少子化が続き、
長期的には市場が縮小していくことが予想できる一方、
受験生増加及び合格率減少の影響から
1人の学生に対する教育費用比重増や低学年からの受験対策・予備校利用の検討増などは想定され、業界としては明るい兆しはあります。
また、欧米型BSL導入により実習日程も増加することが確定しているため、
国家試験対策はできるだけ早く行いたいと考える学生も多く、
予備校受講による国試対策の効率化には一定の需要が見込めます。
そのため、市場全体として急激に縮小することは無く、
少子化の影響を受けながらも徐々にニーズは拡大していくと想定しています。
万が一にも。
専門診療科シーリングが初期研修スタートの時点で起こるようなことがあれば、
(海外の様に国試の成績で専門科が決定されるようなことになれば)
国試対策というのは更に過激になりそうですもんね( ゚Д゚)
もちろん。
卒業=国試の時点では一概に推し量れないですが、
客単価が増え、生徒獲得に向けた熾烈な競争が始まるのは間違いなさそうです。
あなたは10年後、予備校講師になっていますか
こうした状況を踏まえると。
予備校講師としての需要も一定数見込めるので、
皆さんの希望に沿う未来になっている可能性は高そうです。
その代償として。
今まで以上に、生徒側が講師を“選ぶ”時代になることは確実で、
希望者増も相まって、群雄割拠の中での生き残りが発生するかもしれません。
「本業にする予定はない、個別指導で細々とやっていく」
という副業の希望者の牌にも限りがあり、医学生道場のような個別指導塾も
複数出現していることから、既にレッドオーシャンの気配すら感じてます。
SNS上だけでも、これだけ多くの予備校講師が情報発信をしています。
m3(TECOM):
テコプラ (M3E) (@tecopla_tecom) | Twitter
MAC:
医師国家試験予備校MAC(医師国試速報) (@594sokuho) | Twitter
MEC:
メック (@mec__official) | Twitter
Dr.孝志郎 (@Dr37273905) | Twitter
Dr. 渡 (@watari_c_t_w) | Twitter
medu4:
【公式】medu4広報haru (@medu4haru) | Twitter
Q-Assist:
Q-Assist (@medilink_QA) | Twitter
臨床の先生でも医師国家試験の情報を提供してくれる方は数多くいます。
民谷 健太郎 @医学教育×救急科専門医 (@774buya) | Twitter
コウメイ@医師×執筆 (@kokusigokaku) | Twitter
上記に挙げた著名な先生たちですら、
完全に講師業をメインとしている先生はほんの数人ではないでしょうか。
専業こそ至高!といっているのではありません。
兼業がベースの職業である以上、
競合が多ければ多いほど、皆さんの思い描く講師になるのは
非常に厳しい現実が待っているということです。
現代社会では。
として買い叩かれるだけです。
そして。
ここで、更に批判を覚悟で敢えて質問します。
あなたは10年後も、医学教育をしていますか?
次回は。
この言葉の真意を解説していきます。
るんるん!